南米の太平洋側を南北に走るアンデス山脈を、私たちは何度も東西に横断していました。標高5000mにもなる峠を自転車で越えようとすると1週間くらいかかります。途中には村も何もないので、水も食料も全部持って走るんです。道は悪いし標高は高くて酸素は薄いし風は強い。時には深い砂でタイヤを取られると、自分の体重より重い自転車を引きずりながら進むことになります。そんな不毛な毎日に打ちのめされて、身も心もボロボロになってくるんです。何やってるんだろうと思いながら、ふと顔を上げた時の景色がこの世のものとは思えない美しさで、青とは表現しきれないような空の色や、空気がきれいすぎて距離感のない宇宙的な風景に心を吸い込まれてしばらく見とれて、ハッと我に返ってまた進む。その連続です。
峠を超えているときはもう嫌だと思っているんですけど、超えてしばらくするとあの過酷な道に戻ろうかっていう気持ちになるんです。過酷さとしては一番過酷。でも、それに見合うご褒美がある場所でした。
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